「大谷刑部」「茶漬三略」

「大谷刑部」/「茶漬三略」  吉川英治



吉川さんに大谷さんを扱った短編があると聞き、図書館で全集を借りてきました。
戦国の有名人が多数登場する短編は、とりあえず上記の二編を見つけました。
文庫でしたら、ともに講談社の吉川英治歴史時代文庫の『柳生月影抄』に入っているようです。



■「大谷刑部」

言うまでもなく、大谷吉継が主役。家康が会津の上杉討伐に向かったあたりから、関ヶ原の戦いまでを、吉継中心に描いています。上杉討伐にむけて諸将がバタバタと兵を会津に向ける中、吉継の乳母の娘(創作の人物と思われます)が登場し、吉継が好きだった菓子を、垂井に宿営する彼に届ける場面から話が始まります。

吉継の癩病の症状の描写が細かいです。乳母の娘は、彼女の目を通して吉継の病状を描写するためにに登場しているような印象を受けました。癩病の症状がいかなるものなのか知らないのですが、この描写を見ていると背筋が寒くなります…。でもそれ故に、そんな病状にも関わらず隔意なく接する三成の優しさがより強くなるような気がします。

三成の子を引き取るため垂井に宿営する吉継のもとに、三成の使者が訪ねてくる。使者は三成の子は連れず、大事な話があるからと、三成の居城・佐和山城への来訪を求める。三成は吉継を迎えると、その病状の悪化に心を痛めつつも、家康討伐の大挙を打ち明け、吉継の参画を求める。吉継は三成の計画を無謀だと諫めるが、三成に勧められた茶の香りに、過去に茶会でしでかしてしまった自分の大失態を三成がかばってくれたことを思い出して、三成と生死を共にする覚悟を固める。ここの佐和山での三成とのやりとりが、この一編のメインになるかと思います。
関ヶ原の戦いでは、結局小早川秀秋の裏切りで大谷隊は壊滅、吉継の最期で話の幕は閉じます。関ヶ原の戦いの描写の方はけっこうあっさりしてます。

感想は…やっぱり三成は馬鹿正直で、刑部は義理堅いいい友だなぁ、と言う感じ。自分の安っぽい感想ではそんなことしか言えなくてすみません…; 吉継が病に冒される前の姿を知っているが故に、佐和山で久しぶりに出会った吉継に、もう目も見えずお前の笑う顔も見られぬ、と言われて愕然とする三成に、優しさが感じられてよいです。

あと、話の筋とは関係ないのですが…関ヶ原の戦いの最中、西軍に与して動くよう秀秋に使者を送る武将の中に、小早川隆景の名前があったのですが…たぶん小西行長と間違ったんですよね…ちょっとびっくりした。でも、巷説の中には、そういう伝承もあるのかも…と思ったりするのですがどうなんでしょう。詳しくないので分からんです;
あと、宇喜多さんの名前の表記は「浮田」の方になってました。チョイ役で左近も出てきます。ほんとにチョイです…。関ヶ原に参戦する西軍・東軍諸将の名もちらほら。


■茶漬三略

主人公は柾木孫平治という男。羽柴秀吉・明智光秀が登場する短編です。
孫平治の視点からほぼ全編が語られてます。孫平治が牢獄の中で猿(後の秀吉)に会って悪事から足を洗い、美濃の斎藤家の骨肉の争い、はたまた主と仰いでいた光秀の裏切りを目にし、その悪行に耐えきれなくなって、ついに猿――つまり羽柴秀吉に必死の思いで身を投じるのが話の骨子でしょうか…。歴史上のできごとでいえば、秀吉が毛利方の清水宗治の自刃を条件に毛利と和議を結び、大返しをして姫路城に入り、これから光秀を討つ、というところで終わってます。
孫平治という男の視点で、秀吉の性格の健康さを描いている、という感じの一編でしょうか。
チョイ役で、細川藤孝(幽斎)や安国寺恵瓊も顔を出します。



吉川さんの本は大好きなのです。歴史に強い興味を持つようになったのは吉川さんの『新・平家物語』がきっかけだし、三国志に足を踏み入れたのも、吉川さんの『三国志』が最初のきっかけだし…。しかし、まさか今になってもこんなにどっぷり三国志にはまることになろうとは思ってませんでした(笑)。短編は今まで読んだことがなくてちょっと新鮮でした。個人的には…長編の方が好きかも(コラ)。吉川さんの描く関ヶ原も見てみたかったな、と…。
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by huangque | 2005-12-22 03:30 | 本めも